トップ寝言>皮膚常在菌による体臭管理計画

 9月いっぱい続いた残暑もようやく落ち着き、この頃はすっかり涼しい秋である。しかし、ここで一息ついたら、もう間もなく冬の足音が近づいてくる。四季のある土地というのは、とかく忙しいものである。

 ところで、私は、暑い時期に汗をかいてしばらく放っておくと、不思議なことに、納豆のようなニオイが立ち始める。これはここ数年のことで、原因は不明だが、もしかすると最低2日に1回は納豆を食べるという食生活が原因かもしれない。
 私は2日に1回、下手すると毎日食べている時もあるくらいだから、納豆のニオイは気にならない。しかし、納豆が苦手な人間からすれば、「ひどいニオイのするヤツ」ということになる。実際、母は納豆を嫌いなのだが、私のニオイも嫌いだ。このサイトを見ている諸賢の中にも、納豆のニオイが好きになれない、という方がいらっしゃるかもしれない。その場合、夏は私に近づかない方が無難だろう。



 体臭の原因となる物質は、分泌物や老廃物を皮膚上の菌が分解することで生まれるという。つまり、それらの菌の排泄物が臭っているわけだ。 故に、どのような臭いがするのかというのは、皮膚にどのような菌がそれぞれどのくらいの割合で住んでいるかに、大きく影響される。 以前より臭いがキツくなったという場合、それは悪臭の元となる物質を排出する菌が増えたためかもしれない。
 腸の中に住んでいる菌については、かなり昔から、「腸内バランス」「善玉菌」といった文句が宣伝され、ヨーグルトやら植物性乳酸菌やらが大量に販売されている。これは、腸内常在菌を管理しようとする試みに他ならない。そして、実際に、多くの人の健康(と一部企業の利益)に役立っていることであろう。
 そろそろ、「皮膚上バランス」とでも称して、皮膚常在菌を管理するというのはどうだろうか。分泌物や老廃物を分解しても嫌な臭いを発する物質を生み出さない菌を、皮膚上に増やすのだ。もしくは、好ましい香りのする物質を生み出す菌であれば、なお素晴らしい。 もし後者が成功すれば、まさに現代の薫大将になれるだろう[32]

 では、具体的には、どのような菌が佳いだろうか。
 腸内についてはビフィズス菌の評判が高いようだが、これは嫌気性なので、皮膚上では繁殖できない。その点、納豆菌なら問題ないのだが(私の体で実証済み)、それほど人に好かれるニオイではない。
 醤油酵母はどうだろうか。塩分に強いから、汗を多く流す夏に向いている。汗を流せば流すほど食欲をそそる香りが漂ってくるのだから、よく運動し、よく食べる、という健康的生活の助けにもなる。
 ビール酵母の一種、ヴァイツェン酵母というのも佳いかもしれない。甘い果実の香りで、異性を魅きつけることだろう。今までの体臭管理は、主に消臭によって異性に嫌われる要素を減らすという消極的なものだったが、これからは、加臭によって異性に好まれる要素を増やすという積極的なものになっていくかもしれない。

 うまく皮膚上に定着して芳香を発する菌を見つけたら、それをスプレーか何かに詰めて、よく繁殖させるためのコツを記した説明書を付録にすれば、消臭スプレーよりも売れるのではなかろうか。
 どなたか、商品化しませんか。
(2010.10.13)

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