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  J.S.バッハ:「目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声」
   Johann Sebastian Bach: "Wachet auf, ruft uns die Stimme" BWV645


 音響の如何がオルガン演奏の良否に直結することについては、前の二つの録音で示すことができたように思う。
 ところで、音響の他にも、当然ながらパイプ自体の音色も、演奏に於ける重要なポイントである。オルガンというのは音色をいくつか選べる楽器だが、どのような音色のパイプが備わっているかは、個々のオルガンによって異なる。アマプロ問わずオルガニストたる者は、美しい音色に出会えばそれをふんだんに使える曲を弾くし、嫌な音色があればそれを極力避け、他のパイプで代用するようにするだろう。たとえば、「アヴェ・マリア」は、「Vox Celeste」なる音色を使用。これは、他のパイプより若干音高をずらして調律することで、合唱のような響きを生むというもの(つまり、合唱の魅力は、各個人で音程が少しずつずれているということなのか)。
 ここでは、「Oboe 8'」なるパイプを用いて、「目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声」を弾いてみた。これは、元々合唱用に作曲したコラールを、オルガン用に編曲したものである[25]。元々、高音部の旋律楽器、低音部の通奏低音、及び主旋律を担う合唱から成る曲であり、オルガンで弾く際にもその三者の音色を分ける必要がある。そして、こうした場合、合唱パートにはリード管を用いるのがセオリーとされる。そこで、合唱パートにこのOboe 8'を用いてみたのである。
 如何であろうか。途中から時々登場するだけだが、このリードの響きが、実に佳い。録音条件が悪く、弾き方がいい加減なのは毎度のことで恐縮だが、要所要所で鳴るOboe 8'がとにかく素晴らしい。弾き終わった後も、思わず「プップップ」と鳴らしてしまった。
 ところで、最後の方で聴こえる裏声は、もちろん私のものではない。下で組体操のようなものの練習をしていた高校生のものである。誤解なきよう、ご注意を。

(2010.10.1)

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