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  E. A. L. サティ:(犬のための)ぶよぶよとした本当の前奏曲 より 第1曲「厳格な叱責」
    Erik Alfred Leslie Satie: Veritables preludes flasques (pour un chien) ? “Severe reprimand”


 サティは、自分の曲に変な名前を付けることでも知られている。これもその一つで、そもそもは「(犬のための)ぶよぶよとした前奏曲(Preludes flasques (pour un chien))」を作ったことが始まりで、それを出版社に持ち込んだのだが出版を拒否されてしまった。そこで、「本当の(veritables)」前奏曲を作ったという。前作であれ、「本当」の方であれ、いずれも全くぶよぶよしていないのが特徴。
 この曲集は、「厳格な叱責(Severe reprimand)」「家にひとりきり(Seul a la maison)」「お遊び(On joue)」の三曲から成っており(何の「前奏」なのだろうか)、今回は第一曲「厳格な叱責」。ゆっくりと重々しく進む低音の上に、高音部が八分音符で不安定な音型を展開する。譜面にはいくつか演奏上の指示が書き込まれているが、「速く(あまりにではなく)(Vif (sans trop))」「与えて(Donnez)」「染み込ませて(Imbiber)」「肥満の(Corpulentus)」「もったいぶって(Caeremoniosus)」「響かせて(Retenir)」「力いっぱい(En force)」といった具合で、どのように表現すれば良いのか理解しにくいものが半数を占めている。
 こんな曲を作るのだから、100年後の我々にとっては面白い人物だが、身近にいたら嫌なヤツに違いない。彼は20歳の頃にパリ音楽院を退学しているのだが、その時、教授から(文字通りの意味で)部屋の外に蹴り出されたそうだ[52]
(2011.6.23)

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