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  J.S.バッハ:フーガ ト短調 BWV578 「小フーガ」
    Johann Sebastian Bach: Fuge g-moll BWV578


 ご存知、「小フーガ」である。同じくト短調であることから、長大に展開するBWV542のフーガを「大フーガ」と称し、シンプルにまとまっているBWV578のフーガを「小フーガ」と呼ぶのである。「大」に対して「小」とは言われるが、特徴的な美しさを持つ旋律が、アラベスクのような絡み合いを織りなす佳曲である。そして、これを聴いたことがきっかけでオルガン音楽にハマり出す人も少なくない。かの「オルガン探検家」も、中学2年の時にこの曲を聴いたことで「オルガンの虜とな」ったと言う(「プロフィール」より)。
 ところで、東大新聞の取材の後日、例のベテラン記者から草稿が届いた。そこには、A4一枚の中に、様々な内容がテンポよくまとめられており、熟練の文章力を感じさせられた。
 ただ、その中に、「(練習次第では)1年程度でバッハの『小フーガト短調』は弾けるようになる」という文があったので、これについては「1年程度でバッハの『小フーガト短調』も弾けるようになる」に改めるようお願いした。どうも彼には、「小フーガ」というのは簡単な曲として認識されていたらしいが、実際はそれほど易しくはない。確かにオルガン曲としては初級の部類に入るが、手鍵盤は3声だし、足鍵盤も主旋律を奏でるのだから、入門者が気楽に挑戦できるものではない。「小」と言われたり、中学校の音楽の授業で紹介されたりするために、容易なものという印象が一般にあるのかもしれないが、弾けるようになるのはなかなか難しい曲なのだ[34]
 そして、弾けるようになった後でも、油断ならぬ曲である。しばらく練習しないで、久しぶりに弾いてみると、つまらないところでミスタッチを生じる。足鍵盤もないところで、それほど複雑でもないところで、指が自然に別の音に触れてしまう。恐らく、この録音を聴けば、納得頂けるであろう。
(2010.10.17)

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